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小説「ドルチェ」あらすじと感想|魚住久江シリーズ一作目ネタバレ

小説「ドルチェ」あらすじと感想|魚住久江シリーズ一作目ネタバレ
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誉田哲也さんの有名な作品といえば、姫川玲子シリーズ。

しかし忘れてはいけないのが、この魚住久江シリーズです。

若造にはない、42歳という良くも悪くもいろいろな「経験値」のある女性刑事。その経験値があるからこそ、女性+警察という特徴を別の視点から切り取る人気シリーズなんですね。

ということで今回は魚住久江シリーズの一冊目となる「ドルチェ」を読んだ感想と、各短編のあらすじを紹介します。

姫川玲子シリーズが好きな人には問答無用でおすすめできる一冊です。



「ドルチェ」各短編のあらすじ

袋の金魚

ある幼児が溺死してしまう事件が発生。その父親からの通報で現場に向かった魚住久江だったが、子供を見ていたはずの母親が行方不明になっていた。

母親を探すために写真を借りようとするも、父親のほうはなぜか妙にためらう始末。

翌日、母親と名乗る女性が署に出頭してくるのだが・・・そこには予想だにしない「家族の関係」がそこにあった。

ドルチェ

帰宅途中の女子大生が、突然刺されてしまう事件が発生。ただの傷害事件のように見えるものの、久江は違和感を覚える。

その後、友人関係から浮かび上がってきた女子大生の交友関係。彼女は多くの男性との関係があり、そこには大学准教授も含まれていた。

そして現場で発見された新たな証拠。久江は思いもよらない真実にたどり着く。

バスストップ

女子大生がバス停の近くで「突然抱きつかれる」という痴漢被害が発生。最近頻繁に起きているわいせつ事件につながるものとして、警視庁の捜査一課から佐久間が合流することに。

横暴で独自の正義感を振り回す佐久間に嫌悪感を募らせる久江。

そんな中、バス停に不審な男がいたという目撃証言が。その男が犯人だとにらんだ佐久間だったが、久江はその男を見て別の何かを感じ取る…

誰かのために

ある印刷工場で2人の人間が大けがをする傷害事件が発生し、久江は現場に向かう。2人に怪我をさせたのは印刷工場で働いていた男との証言が。

その男の家に行くと、男は部屋にうずくまっていた。彼には彼の言い分があるというのだ。

その話を聞いて、久江は事件のより深いところへと踏み込んでいきます。タイトルの意味「誰かのために」とは一体…

ブルードパラサイト

ある家庭で起きた傷害事件。被害者は夫で、刺したのは妻だという。久江は現場に向かうものの、妻は抱いている赤ん坊に包丁を向け興奮状態になっている。

逮捕後も何も語ろうとしない妻。一見ヒステリックな妻の暴走かと思える事件でしたが、そこには目に見えない歪んだ家庭の形が・・・

妻が起こした傷害事件の理由とは。それを知ったときの久江の行動は・・・

愛したのが百年目

ある男性が車で轢かれてしまったと通報があり、現場に向かった久江。事故の被害者は重体。しかも轢いてしまったのは被害者の友人だった。

しかし轢いてしまった友人の行動や、被害者の家族の行動を見るに、単純な交通事故だと思えなくなった久江は捜査を開始する。

そして被害者たちとの関係が数十年前にさかのぼることを知り、事件の裏側が明らかになる。

弱さゆえ ※光文社文庫版のみ

2020年に光文社文庫から発売されたバージョンには、追加で「弱さゆえ」という短編が追加されているそうです。

私が読んだのは新潮文庫版だったので、入っていませんでした…残念。




「ドルチェ」の感想

これ以降はネタバレを含みます。ご注意ください。

私は以前から誉田哲也さんの書いた【姫川玲子シリーズ】にでてくる姫川玲子が好きで、

『姫川玲子と結婚したい。そして家事は全部やるから全力で養ってほしい。』

と思っている男なんですね。

そして今回読んだ【魚住久江シリーズ】。

ちゃんと読んだのは今回初でしたが、やはり魚住久江もしっかり好きになってしまうキャラクターでした。

ただ好きと言っても「姫川玲子」の好きとはちょっと違いますね。

姫川玲子の好きは「夜11時ぐらいに2人でソファに座って、ちょっとお酒飲みながら海外ドラマを見てイチャイチャしたい」って感じの好きで・・・

魚住久江の好きは「朝10時ぐらいに駅前集合して、美術館で絵を見た後にドトールでコーヒー飲みながら仕事のグチを言いあいたい」って感じの好きですね。

なんとなくわかります?

姫川玲子も魚住久江も刑事ということでビシッとしているのですが、共にめちゃくちゃ人間味があって、そこが刑事とのギャップにキュンと来るのは同じなんですが…

なんというか魚住久江には受け止めてくれる包容力を感じたんですよ。なんでも受け入れてくれそうな。これは別に「年齢が~」とかではないですよ。

朝10時に集合に駅前集合とか言ったら嫌がる女性もいるじゃないですか。

『美術館行こうよ』とか言ったら『歩くのだるい』っていう女性もいるかもしれないし、『ドトールはオジサンっぽいから嫌だ』とかいう人いそうだし。

そして話も「会社のグチ」という生産性ゼロの話でうんざりしちゃう人もいそうだし。

でも魚住久江は全部OKしてくれそうなんですよね。

ちなみに姫川玲子は全部NOって言いそうな雰囲気あります。いや、そこが好きなんですけど。

まあ何が言いたいかって言うと、「みんなちがって、みんないい」という。

雑なまとめ方になってしまいますが、

まあそういうことです。



なお最初に「姫川玲子シリーズが好きな人には魚住久江シリーズもおすすめ」と書いてしまいましたが、話のスケールや緊張感でいったら物足りないでしょう。

やはり事件に殺人が絡んでこないため、「非日常感」というかインパクトには欠けますよね。

ただ、逆に言えば「日常感」は少し強いわけで。短編「誰かのために」なんかは近年の社会の闇を描いているようでおもしろかったです。

日常系ミステリーとか、人が死なないミステリーが好きな人にはぜひともオススメしたい一冊でした。

姫川玲子シリーズに魚住久江が合流!

なお、姫川玲子シリーズの10冊目「マリスアングル 警部補 姫川玲子」にて魚住久江が合流するというクロスオーバーな展開が。

2人の女性刑事がどんなケミストリーを見せてくれるのかが見ものですね。

姫川玲子シリーズしか知らない人は、ぜひ魚住久江シリーズを読んでから読むことをおすすめします。


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