これのどこが「ラブ」だよ。
東野圭吾の恋愛×ミステリ小説『パラレルワールドラブストーリー』を読みました。
結論からいうと、タイトルに「ラブストーリー」とあるものの、私には「ラブ」を感じられませんでした。「愛」を感じられませんでした。
そしてチンパンジー。お前は何だったんだ。
ということで、率直な感想を書いていきます。
パラレルワールドラブストーリー感想
この作品、累計発行関数は100万部を超えているし、吉岡里穂ちゃんがヒロインとして実写映画化もされているし、「切ないラブストーリー」って評判も耳にしたんですけど…
いや、これはラブじゃないですよね?
誰にも共感できない三角関係
作品はいわゆる三角関係で、2人の男性が1人の女性に好意を寄せるってベーシックな形なんですけど・・・
誰一人好きにもなれないし共感もできなかったんです。
まず崇史。
親友の彼女を好きになってしまったとか、彼女を離したくないとか、そばにいたいとか言ってますけど・・・
普通に性犯罪者ですよ、あんなもん。
自分が好きだからって相手の家にアポなしで夜の11時に行って勝手に家に上がりこみ、嫌がっている女性と性行為って・・・
これのどこがラブストーリー??
これさえ無ければラブストーリーでしたよ。まだ。親友に内緒でプレゼントあげちゃうとかはしょうがないでしょう。ただ手を出したらあかんでしょう。
映画版ではこの部分どう表現されてたんでしょうか?
しかもそこでの自己弁論みたいな思想にも鳥肌立ちました。
テレビのスイッチをきったのは俺だが、ナイトスタンドの明かりを消したのは麻由子だった。
引用:東野圭吾「パラレルワールド・ラブストーリー」講談社文庫
この行為を「彼女も望んでいた」っていう風にとってたらホント怖すぎます。見られたくなかっただけだからね、彼女は。
こんなやつが主人公って。ラブ要素はどこ?
そしてその麻由子の彼氏だった智彦。
同じ男として言わせてもらうと彼もちょっとおかしいです。いや、彼には身体のハンディがあるってことで彼の気持ちはわからないのですが…
まず彼女を親友に紹介。これはわかる。
ランチに誘って3人で一緒に食べる。これもわかる。
2人にテニスをさせて嫉妬する。これがわからない。
自分にはできないからさせてあげたい、って理由なのか、親友の気持ちを知るための作戦なのかわからないですが・・・何にしても意味が分からない。
彼女も別に乗り気じゃなかったし、男のドロドロした嫉妬もわからなくないですが、なんか曲がってる感じで好きじゃなかったです。
「俺たちは親友だから」みたいな関係性があったからですかね。なんか気持ち悪かったです。
そして2人に惚れられる美女の麻由子。
まあいい子だとは思うんですけど、結果として優柔不断というか…なんかすっきりしない。
誰も傷つけたくないと言いつつ結局みんな傷ついてるし。
崇史が嫌ならプレゼントもアプローチも突っぱねればいいし、智彦よりも崇史を好きになっちゃったら相手のこととか考えないで別れればいいし。
3人が3人とも中途半端な優しさを振りかざして、結局3人とも不幸になるという救われなさ。
まあわかっててもそれができないのが「若さ」なんですけどね。
それがわからないのは俺が「おじさん」になってしまったということでしょう。誰がおじさんだ。
「ミステリ絡みの恋愛小説」は好きだけど…
ミステリと恋愛が絡んだ小説が大好きなんです。
乾くるみさんの『イニシエーション・ラブ』は会社を早退しかけるぐらい心をやられましたし、荻原浩さんの『噂
』ではシリアルキラーそっちのけで2人のバツイチ刑事の恋愛模様が気になっちゃってましたし。
現実離れした「ミステリ小説」という分野で「恋愛」って唯一共感できる部分だったりするじゃないですか?
逆に言えば『ハリー・ポッター』っておもしろいけど共感はできないじゃないですか。魔法使えないし、俺メガネかけてないし。
だからミステリ×恋愛ってことでかなり期待して読んだんですよね。
だからこの3人のラブストーリーが全然スッキリしてなくて残念でした。
崇史=チンパンジー説
ていうか崇史ってチンパンジーだと思ってたんですよ。
研究の実験台としてチンパンジーのウーピーが出てきましたね。そしてある考察をしていました。
【崇史=チンパンジーのウーピーではなかろうか?】と。
特に根拠はないんですが、ちょいちょいウーピーの様子に対する描写が書かれたり、ウーピーが空を一点に見つめているというようなシーンがあったりと…
これはきっと「ウーピーに崇史という人間の記憶を植え付け(記憶改ざん)その反応を観ている」といったどんでん返しが待ってるのではないか、と考えたわけです。
だから途中で崇史が麻由子とエッチなことしてるシーンが登場しましたが・・・その時も俺はムホホと思いつつ、
『スケベなチンパンジーだな』
と思ってました。
そしたらチンパンジーは関係なかったというね。
スケベだったのはチンパンジーではなく俺でした。
ありがとうございました。
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