魚住久江のおばちゃん感が際立つ、いい意味で。
誰も死なないし、大掛かりな叙述トリックもない。そんな魚住久江シリーズ二作目「ドンナ・ビアンカ」を読みました。
結論ですが、
地味すぎます。地味すぎてハラハラ感はほぼゼロです。
夜中にモナ王を買いにコンビニ行ったらヤンキーがいっぱいいた時の方がよっぽどハラハラです。
しかし魚住久江シリーズとしては「大正解」だったと思います。
ちなみに。
ドンナ・ビアンカの意味はイタリア語で【ドンナ=女性】【ビアンカ=白い】で白い女性。
魚住久江シリーズ一作目が【ドルチェ=甘い、優しい】とコチラもイタリア語だったので、三作品目もきっとイタリア語でしょうね。
多分「サイゼリヤ」、もしくは「ミラノ風ドリア」です。
ということで「ドンナ・ビアンカ」の感想を書きます。
「ドンナ・ビアンカ」感想
とにかく地味なんですよ。
【不器用な男と純粋な中国人キャバ嬢のラブストーリーで、そこに狂言誘拐が絡むという】
考えてみると、ただそれだけなんですね。
殺人事件が起こることも無いし、狂言誘拐もまったく計画性のないレベル。『ちょっと土日に考えてみました』ぐらいの企画案みたいな。
ただそれが逆にリアル。だからこそ「その辺で本当に起きてそう」感がある。地味さが良い意味で活きてました。
なので、読み終わった後の満足感は決して低くないと言いますか、むしろ高めでした。
魚住久江の“おばちゃん感”
やはりその理由の一番は、魚住久江のおばちゃん感ですね。
うん、じゃ、私が一緒にいってあげる…ほら、そんな恰好じゃ寒い寒い。風邪ひいちゃうよ。
引用:誉田哲也『ドンナビアンカ』新潮文庫
この「寒い」を2回繰り返すおばちゃん感。これですよ、これがこの人の魅力です。
魚住久江にも熱さとか信念は絶対にあるんだろうけど、それをわざわざ出さない余裕があるというか。
これが姫川玲子シリーズとの違いですよね。姫川玲子だったらこうはなってないと思います。
姫川玲子シリーズ大好きなので「どっちが良い」とかはないんですが。
今回の事件は魚住久江で「大正解」でした。
犯人、てめえ
ただその地味さゆえに犯人は最高に小物でしたね。
『もうやめだッ。全部ナシッ』じゃないのよ。
なにその「ガチャが全然でなくてアプリをアンインストールした」みたいな言い方。
いやあなた、人間の小指切り落としちゃってるからね?
誉田哲也さんの作品にはたびたびこういうクズが登場しますが、この副島ってやつは本気で痛い目にあってほしい。
夜中にコンビニ行ってヤンキーに因縁つけられてカツアゲされてほしい。
魚住久江役は檀れい
この「ドンナ・ビアンカ」はテレ東で2020年にドラマ化されたようで、その時の魚住久江役は「檀れい」だったそうです。
ドラマはまだ観てないんすが、言わせてほしい。
これは違いますよね。
キャスティングしたやつは何を考えてるんだ、と。本当に魚住久江シリーズを読んだのか、と。
言い方が悪くなってしまいますが・・・魚住久江は美人じゃダメなんです。
その辺にいそうな女性だから光るんです。輝くんです。犯罪という社会の闇を照らすんです。
普通の人だからこそ、普通に生きている人の気持ちがわかるし、共感できるし、その人たちの生活を守りたいって命かけて働いてくれてる刑事さんなんです。
それを檀れいさん、いや「檀れい」って。
いや、檀れいがバツイチ独身女刑事だったら警察官全員が「お付き合いしたい」って群がってきますし、忘年会ならだれが隣に座るかを賭けたビンゴ大会始まりますし、刑事が檀れいだって知ったら犯人も自首してきますよ。
そのビンゴ大会、会場どこですか?
誉田哲也さんの作品に関する記事はこちら
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