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『リラ荘殺人事件』を読んで警察にキレそうになったところ3選|感想

ブックレビュー読書感想文
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読むのがキツイ小説でした。

昭和51年に出た小説ということで古さや分かりにくい表現。なかなか多いページ数。淡々と犯罪が起きて、いまいち盛り上がらない展開の数々。

しかし。そんなことはかわいく思えるぐらい、キツイことがありました。

警察が本当に無能すぎる。

もう何度本をぶん投げそうになったか。

ということで、警察にキレそうになったところ3選です。


『リラ荘殺人事件』感想

これ以降はネタバレを含みます。ご注意ください。

証拠ないのに逮捕してる

いきなりですが、一番ひどいのがこれですね。

「殺せる機会があったのはあいつしかいない!」という証拠とも言えない証拠を突き出して無実の我孫子君を逮捕してます。

それで自白させようとしても、逆に言い返されて『ぐぬぬ…』みたいになってるし。

そもそもそんな状況で逮捕とかアリなんですか?

そしてしまいにはこんなこと言ってます。

ああいうしぶといやつには、証拠をそろえて恐れ入らせるほかに方法はない
鮎川哲也『リラ荘殺人事件』より引用

いや、証拠ないんかい。

もう無茶苦茶ですよね。

仕事してないですから、この人たち。『うーん、多分犯人だと思う…たいほっ!』みたいなノリで刑事やってますからね。

相棒の右京さんがみたら『恥を知りなさい!』ってブチ切れてますよ。

さらにヤバいのがこのセリフ。

ストーリーの終盤で尼リリスが殺害された後のセリフです。

由木君、これで事態はいいほうに向かったよ。少なくとも、われわれにしてみれば立場が有利になったんだ。犯人はのこるふたりのうちのどれかにちがいない。
鮎川哲也『リラ荘殺人事件』より引用

え、消去法?

びっくりしましたね。彼はどうやって警部まで昇進したのか教えてほしい。

というか容疑者が2人に絞られるほど、たくさん殺されてるのに「事態はいいほうに向かったよ」とか。逆だよ、逆。

それで結局。

犯人だと思っていた我孫子を牢屋に入れてる間にまた殺人が起き、我孫子が犯人じゃなかったと気づきます。

その時にはなったセリフがこちら。

いえ、犯人は我孫子君じゃありません。われわれは少しばかり勘違いをやっていたんです。
鮎川哲也『リラ荘殺人事件』より引用

いや、どのへんが「少し」なの?

なんだその態度は

3人目の被害者として、リラ荘のお手伝いさんである「お花さん」が殺されてしまいました。

それを発見したのが、その夫である万平さん。

その万平さんが、遺体を発見したことを由木刑事と剣持警部に知らせ、3人で遺体の場所へ行った際の由木刑事のセリフです。

由木刑事は耳をつきだしてどなった。

『え?もっと大きな声で!なに?手洗いのタオルだって?トイレットのタオルというんだね?』
鮎川哲也『リラ荘殺人事件』より引用

いや、今はどうでもいいだろ、そんなことは。

どこに気合い入れてるんですかね、こいつは。

相手は今さっき奥さんの遺体を発見した夫だよ?そんな辛い状況の相手に、「このタオルは何ですか!??!」って聞く必要あります?

これが「その凶器が今すぐ分かれば犯人を見つけられる」って状況ならわかりますよ。がっつくのも。

でも別に今それを知ったところそうはならないし。

そしてしまいには万平さんから何も情報を得られないとわかると、

暗い闇の中で剣持は顔をしかめて舌打ちした。肝心のことになると、こののろまな亭主はなんの役にもたたないのである。
鮎川哲也『リラ荘殺人事件』より引用

それ、お前だよ。

「なんの役にもたたない」って。この警察官2人がそろって寝ている間に殺人が起きてますから。

しかも2回。

そんな奴らが、奥さんをなくした夫の前で怒鳴ったり舌打ちしたり…

2人の万平さんに対する態度が意味わからなすぎで、この小説で一番キレそうになりました。

小説の80%

そんな無能な由木刑事と剣持警部ですが、読者はこの無能さをたっぷり読ませられます。

この『リラ荘殺人事件』の探偵である「星影龍三」が話に入ってくるのが、なんと小説が80%終わるころなのです。

明らかに遅すぎる。こんな推理小説ありますか。

なので逆に言えば・・・

この星影龍三が出てくるまでの小説の80%を、無能な警察を見てイライラすることを強いられます。

なんでそんなことされなきゃいけないの?新手の拷問かな?

そして残りの20%は解決編です。

この20%は一気に駆け抜けるので、かなり面白いのですが、それゆえ前半の80%のイライラが本を読み終わった後に襲い掛かってくるという・・・

あれ?やばい、文句しか書いてない。




理解はしてます

ひたすら警察に対する文句ばかり書いてしまいましたが・・・

いや理解はしてます、わかりますよ。

探偵が出てくる小説では、やはりメインは「探偵」なので警察が必要以上に頑張っちゃうと『あれ、探偵いらなくない?』ということになりかねませんし。

名探偵コナンでも基本メグレ警部は役に立ってませんからね。

ただこの「警察が無能」というのは昔の推理小説ではアルアルなのかな、と思いました。

あの名作である島田荘司先生の『占星術殺人事件』なんかでも「警察は役立たず」という位置付けになっていましたし、

小峰元さんの『アルキメデスは手を汚さない』なんて、「もうすぐ本終わっちゃうよ」という終盤。

警察が凡ミスして『こいつは振出しへ逆戻りだぞ!』とか言っちゃいますからね。

>>小説『アルキメデスは手を汚さない』感想|刑事が無能すぎてキレそう

とはいえ今回のはかなりひどかったです。


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