とりあえず、全員気持ち悪いですね。
奈良県の奥深い山間部にある「すくいの村」。そこへの潜入取材を行ったルポライターの手記を題材とした小説『出版禁止 ろろるの村滞在記』
巧みなトリックとエグさで定評のある「禁止シリーズ」の1つです。
禁止シリーズのファンとして今回読みましたが、
なるほどなるほど…
全員気持ち悪いですね。
出版禁止 ろろるの村滞在記 あらすじ
近畿地方のある奥深い山間部に、村はあった。心に深い傷を負い、積年の恨みを抱えた人々が最後に辿りつく「すくいの村」。だが、そこには呪いで人を殺すという根強い噂が……。2008年、近隣の廃村で陰惨な死体遺棄事件が発生。現場は暗い森に囲まれた酒内湖畔。遺体は切断され、樹木に釘で打ち付けられていた……。
出典:AmazonBOOK 内容より
ネタバレありで感想
読んでいてずーっと気持ち悪い雰囲気が漂っていました。
もうこれは「禁止シリーズ」のお約束となっています。
ということで、「出版禁止 ろろるの村滞在記の気持ち悪いこと3選」です。
キノミヤ
この地獄のような小説の中心人物であり、すべての元凶ともいえる男「キノミヤ」。
色々気持ち悪いところがあるんですが、
一番ムカついたのは、話が長いところですね。
蝉の話とか、いろいろ話していましたが、自分に酔っている感じで気持ち悪かったです。
そしてさらにキノミヤが書いた本も長い。
なぜ小説を読んでいる私たちが、本の中でまた別の本を読まされないといけないのか。
しかも難しくて全然わからん。
まとめサイトはないのか、と。
Youtubeにゆっくり解説動画はないのか、と。
このキノミヤや、娘の朔たちの一族は「呪いを成就させるため」に生きているわけですよね。
そのために人生を全部使って人を呪い、そしてまた次の100年に繋げるために生きていると。
私は聞きたい。
いいんですか、それで。私からしたら「救い」が必要なのはあなた方一族じゃないんですか。
もっと楽しい人生はありますよ。ゆっくり動画とか。
と言いたいですが、先祖代々とか言われちゃうとなんとも言えないですけどね。
朔も、自分の血筋を呪い、運命を受け入れることを拒んでいた時期もあったそうです。
だから余計にキノミヤの罪にイライラしますよね。
青木伊知郎
藤村朔と結婚した男で、次世代の「キノミヤ」を就任した青木伊知郎。
こいつも気持ちわるかったですね。
都築亨が自分の手で文章をかけなくなった後、続きを書いたのが青木伊知郎でした。
こいつによると、藤村朔がずっと自分の運命、つまり「呪いの一族」として生まれたことに葛藤していたことも知っていたそうです。
ということはそれほど前からの知り合いだったわけで、拒む彼女を説得した1人でしょう。
青木伊知郎は完璧に「呪いの一族」のとりこになっており、都築亨と藤村朔についてもこんなことを言っています。
Tと妻は心で通じ合っている。私は二人の関係に嫉妬のような感情を禁じ得ない。恥を忍んで言うが、羨ましいとさえ思うこともあるのだ。
長江俊和『出版禁止 ろろるの村滞在記』より引用
いや、殺しておいてよく言うよ。
都築亨は死にたくなんてないでしょうし、藤村朔だって自分の運命を拒んだと言っているんですよ。
そんな藤村朔と妻としておいて、都築との関係性を嫉妬とか。
都築なんて完璧に巻き込まれただけですからね。
それを殺しておいて・・・自分勝手も甚だしくないか。
佐竹綾子
名前はほとんど出ませんでしたが、殺されてしまったルポライター「都築亨」とは別にいたルポライターですね。
話の中では、この女性が「都築亨がいけにえになった」という事実を本としてまとめた、という流れでしたが・・・
この女も気持ち悪いですよ。
結局彼女も「誰か呪い殺してほしい」という人物がいたらしく、まえがきにて(本の中では一番最後)その願いがかなったといっています。
私の知人が、不慮の事故で命を落としたのだ。その事実を知って、私は慟哭するほど、歓喜に打ち震えたのである。
長江俊和『出版禁止 ろろるの村滞在記』より引用
いや、打ち震えてんじゃないよ。
都築が殺されているのを知っているわけですからね。ここで打ち震えるのはなかなかひどいですよ。
さらに言いたいのが、
この本の内容が「順番が逆」になっているのも、この佐竹綾子が編集した、とのことです。
それに対し、読んだ我々読者に「あなたもサカウチを経験した」「救いの村の人たちと同様に禁忌を犯した」とまで言ってきます。
いや、お前のせいだろ。
こっちはそんなこと知らずに頭から本を読んだだけなのに「禁忌を犯しましたね」って。
罠じゃないですか、これ。
しまいには「この先あなたに何が起こるかわからない」とまで言ってきます。
いや、やめてよ。
勝手に逆に本を書いて私たちを共犯にするのやめてよ。
最後には「神の御加護があることを」って。
お前がいうな。
〜 Fin 〜
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