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小説『隻眼の少女』感想|ムカつき過ぎてトリックどころの話じゃない

小説『隻眼の少女』感想|ムカつき過ぎてトリックどころの話じゃない
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正直に言って、読むのはだいぶ苦痛でした。

著者の麻耶雄嵩さんの本は好きで、特に「神様ゲーム (講談社文庫)」って本は多分4回ぐらい読んでいます。なんなら本の考察をし過ぎて、ブログにまとめたら5000文字以上あって震えました。

そのぐらいの著者の本なので、ウキウキで読み始めたわけですが・・・

めちゃくちゃイライラしました。

『どういうことだよ』『何をしてんねん』『お前誰なんだよ』

そんな言葉がふと漏れてしまう、そんな一冊。ということでイライラしたところを小説の感想交えてピックアップしました。



『隻眼の少女』感想

これ以降はネタバレを含みます。ご注意ください。

第64回日本推理作家協会賞、第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞

とか言ってるけどどうでもいいです。

今回については正直言ってイライラしすぎてミステリーのすごさとか霞みました。

ということでムカつくところ3選、いってみましょう。

名前が覚えにくい

誰が誰で、あなたは誰だよ?

今回の小説の核となるのは、ある伝説が語り継がれる村に住む一族。

代々引き継がれてきた文字を使用したりしているので、必然的に似た名前が多くなります。そもそも一族ってことで人数も多いし、大きなお屋敷だから使用人や、謎の居候がいるとか…

そういった「名前の覚えにくい環境」であるのはわかるんですが…にしてもわかりずらいのです。

本の最初に書かれている人物紹介がわかりにくいんですよ。

こんな感じで・・・

琴折 達紘 :琴折家当主
   比菜子:スガル・達紘の長女
   伸生 :比菜子の夫
   昌紘 :達紘の息子
   紗菜子:達紘の次女

   和生 :比菜子の息子
   春菜 :比菜子の長女
   夏菜 :比菜子の次女
   秋菜 :比菜子の三女

   美菜子:比菜子の叔母
   登  :美菜子の夫
   菜穂 :美菜子の娘

   久弥 :比菜子の従兄妹
   光恵 :久弥の妻

いや、「菜」が多すぎる。

もう「比菜子」「紗菜子」「美菜子」なんてホント区別つかないですよ。

美菜子の説明なんて【美菜子:比菜子の叔母】って。日本語勉強中の外国人が見たら発狂して国に帰りますよ。

ちなみに後半では冬菜、月菜、花菜、菜彌も出てきますからね。

それに文字だけの表記方法もわかりにくさを助長してます。

ツリー型の家系図を載せてくれればまだ親切なのですが。

小説『隻眼の少女』感想|家系図家系図作ったら恋愛リアリティー番組みたいになってしまった

ていうか琴折(ことさき)もサッと読めないし。名家だからってカッコつけて「折」とか使わないでほしいですよね。

琴崎(ことさき)でいいでしょ?「崎」って漢字が嫌なんですか?世の中の「岩崎さん」に失礼ですよ。

もっと言うと主人公の御陵みかげ。

御陵(みささぎ)と読むそうです。

だからサッと読めないんですって。漢検かな??

子供が簡単にコロされすぎ

倫理観は無いのか?というほどの惨劇でしたね。

今回の事件で15歳の少女が5人もコロされています。しかも全員首を落とされてしまうという…

一応それには目的があり、【目的の事件に注目されないために殺した】という悪魔のような話ですが、「少女のみを狙ったサイコパスの犯人じゃなかった」というところがほんの少しだけ救いがあったように思います。

ただムカつくのはその少女たちを守っていた警察や周りの人間に関してでして…

確かに同情すべきところもあります。「実は一番ありえない探偵が犯人だった」ということで、隙を見せてしまったところは理解できますし、最初の1人目はまあ仕方ないかもしれませんが・・・

結果5人はどう考えてもコロされすぎでしょう。

5人も首落とされてるから、インパクトも薄まってるし…3人目ぐらいから「首がない?あっそう。」ぐらいに。

というかコロされる可能性があるのに子供をひとりで寝かせるんじゃないよ。

親も親だし、明らかに警察も無能すぎる。だいたい警官ひとりだけで見張りって。案の定不意打ちくらってるし。

バディで守りなさいよ、右京さんと杉下君みたいに。

そして俺が子供の親なら確実にその土地から逃がしますね。そしてアパホテル予約して、そこで事件解決まで一緒に缶詰生活しますよね。

一族にとっては大事なしきたりとはいえ・・・

部外者から見たらそんなことで結果命を奪われた5人がかわいそうで仕方なかったですよ。



みんな犯人をかばいすぎ

今回の小説でホント謎だったんですが。

あの「犯人をかばって犯行を認める」ってくだり、なんだったんですか?

まあ1回ぐらいならわからなくもないんですが、結果として3回出てきましたからね。さすがに3回目は本当にうんざりでした。

正確に言えば2回です。

2回目は「スガル様が認めた」っていうのは結局【御陵みかげのひとり芝居だった】、ということなので実際にやってはないけど犯行を認めた、って登場人物は2人でした。

しかし読んでる側としては、3回同じ衝撃が来てますからね。さすがに『なにこれ?』って感じです。

特に3回目に罪をかぶろうとした琴折和生。

身長がやたら小さいけど顔だけおじさんとか、結婚相手が親戚の未成年の女の子とか。なんかどことなく気持ち悪いイメージがあった登場人物でしたが…

その和生が犯人だと言われた際、

『もういいです!』
窓ガラスが割れそうなほどの大声を上げ、和生は顔を伏せると、耳を塞ぎ左右に何度も振った。
『もういいです…僕がやったんです。もうどうでもいいです』
まるで子供のように泣きじゃくる。
引用:麻耶雄嵩『隻眼の少女』 文春文庫

400ページ以上読んできてこれかよ、と。こんなやつが犯人かよ…って思いました。

少女が5人も首切られて、こんなおじさんが犯人とか。そんな残念な気持ちで読み進めていたら・・・

『じゃあ僕は犯人じゃないんですね?』
引用:麻耶雄嵩『隻眼の少女』 文春文庫

なんなんだよ、コイツは。

どうしちゃったんだよ、お前は。今までいろいろなミステリー小説読んできましたけど、初めて見ましたよ。こんなセリフ。

もう小説の90%が終わりかけてるところでこんな展開ですからね。

ムカつきすぎて真犯人が明らかになるシーンもトリックも、何も頭に入ってこなかったです。

麻耶雄嵩さんの作品、楽しみにしていたのに…

悔しいので『神様ゲーム』地獄の5回目、行ってきます。


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