このページに書いてあること
倉知淳さんの小説「星降り山荘の殺人」を読んだ読書感想文です。
「探偵役も助手役も好きになれないなぁ〜」、なんて思っていたら、
まさかのテーブルひっくり返し!「おもしろい推理小説だったなぁ」と思っていたら、
不意にでてきた甘酸っぱいやり取りで「あああああ!」ってなりました。
小説「星降り山荘の殺人」感想レビュー
何度も見ている「ベタな展開」から「ベタじゃない展開」へ──
設定は超ベタとも言えそうなクローズドサークル。つまり閉ざされた空間で誰が犯人かを当てる推理小説。
容疑者は多くなく、しかし誰でも犯人の可能性がある状況で展開されたストーリーだったのですが。
スターウォッチャーとかいう職業のイケメン星園が登場し、その部下にはやたら文句やグチが多い男、和夫。小説家の女性とアシスタント。UFO研究家。2人の女子大生。招待した社長とその部下。
「このメンバーで一夜を共にしても絶対おもしろくないだろ」
という地獄のような面々が集められ、そこでいきなり起きる殺人事件。
「社長が殺されている!」
「なんだってー!?」
「警察を呼んでこよう!」
「だめだ、道が塞がれていて出られない!」
我々は名探偵コナンと金田一少年の事件簿で何度も見てるんですよ。
こんな流れ多分100回は見てますよ、というベタすぎる展開。
女子大生が言います。「えー!じゃあ私たち、殺人鬼と一緒に閉じ込められちゃったの!?」
── そうですよ。決まってるじゃないですか。
そして発生する第二の殺人。社長の部下が殺されてしまいます。
女子大生が言います。「まさか…2人も殺されちゃうなんて…!」
── そうですよ。一人で終わるわけないじゃないですか。
こんな状況でも読んでるこっちは冷静です。
我々は名探偵コナンと金田一少年の事件簿で何度も見てるんですよ。
そんなベタな展開で進んでいきますが、おもしろくなってきたのはここから。
登場人物の中に犯人っぽい奴がいないのです。ベタな内容なのに誰も犯人っぽくない。
通常1人や2人は「こいつ犯人だろ」って奴がいるのですが…いない…
あれれ?これまさか「この中に犯人はいなかった」というオチなんじゃ?
もう他殺という認識が間違っていたのかも知れない…または宇宙人が犯人説、あるかもしれない…?
お、おもしろくなってきた…と血圧が上がります。
そして探偵役の星園が推理を披露し始めます。スターウォッチャーとかいう「人差し指をピンと立てるのがクセ」という設定。もうこいつが犯人でいいよ。
星園が推理した結果…犯人は和夫!?まさかの主人公、和夫!?
と、驚いた結果、犯人は星園さんでした。
まさかの探偵役が犯人というどんでん返し。
名探偵コナンでいえば毛利小五郎が「犯人はコナン!お前だよ…!」と言っているような感じです。
ストーリーがベタすぎたのでこの展開はおもしろかったです。
まあよくよく考えたらそうですよね。ベタな展開でなおかつ「招待客の〇〇さんが犯人でした」じゃあいくら斬新なトリックでもベタベタすぎる。
ここまででも楽しめましたが、個人的に一番の衝撃は事件の後に待っていました。
事件も解決し、見事犯人を特定した麻子さんと和夫のやり取りから。
一緒に振り返りましょう。
「何なの、麻子さんの夢って」
「内緒です」
「ケチだなぁ、教えてくれたっていいじゃないか」
「嫌、教えない」
そっぽを向いた麻子の肩を、和夫は捕まえてこちらを向かせた
「こら、教えろ」
「嫌でえす」
倉知淳「星降り山荘の殺人」講談社文庫
ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!
この「嫌、教えない」のインパクト!敬語からタメ語になる男女の壁を1つ超えた瞬間!
そして最後の敬語とタメ語が混ざった「嫌でえす」の「え」!!!
でとす間に「え」があることで一気に可愛さが限界突破した驚異の「え」!!!
…あーまさか推理小説のラストにこんな甘酸っぱい展開を入れてくるとは。
ベタな展開で読みやすく、謎解き編も丁寧で、なおかつシッカリどんでん返し。どんな人にもおすすめできる推理小説でした。
最後が甘酸っぱすぎて犯人が誰だか忘れてしまいましたわ…
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