こんな方のために書きました
- 小説「どちらかが彼女を殺した」を読んだ
- 2人の容疑者、どっちが犯人かわからない
- なぜ犯人を判断できるかの理由を知りたい
読者参加型の謎解き推理小説「どちらかが彼女を殺した」を読みました。
東野圭吾さんの小説「どちらかが彼女を殺した」は、ミステリ小説でありながら【犯人が書かれていない】という特徴があります。
本の中身をしっかりよく読み、推理し、さらにはヒントを読めば犯人を判断できるようになっています。
ということで 今回は小説「どちらかが彼女を殺した」の犯人判明までを解説します。読んでも犯人がわからなかった方はぜひ読んでみてください。
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小説「どちらかが彼女を殺した」を簡単に紹介
東野圭吾さんの著書で、刑事の加賀恭一郎が活躍する『加賀恭一郎シリーズ』の一作品。今回の「どちらかが彼女を殺した」はシリーズ第3作目の作品です。
あらすじは、ある女性が遺体となって発見されます。自殺のように見えるも、警察官である兄はそれを「他殺」だと疑います。自身で事件を追っていくうえで2人の容疑者が…
2人の容疑者のうち、どちらの犯人なのかを読者が考える、読者参加型の推理小説です。
和泉園子を殺した犯人は誰?
早速ですが、和泉園子を殺した犯人は誰なのか?容疑者は2人いました。
- 佃潤一(和泉園子の元カレ)
- 弓場佳世子(和泉園子の親友)
ズバリ、和泉園子を自殺に見せかけ殺害したのは…佃潤一です。
なぜ佃潤一が犯人なのか。順に見ながら解説していきます。
犯人が判明するまでの解説

事件の可能性
まずは本に出てきた中での真相の選択肢です。
今回の事件の真相として、3つの可能性がありました。
- 和泉園子は佃潤一によって殺された
- 和泉園子は弓場佳世子によって殺された
- 和泉園子は自殺した
佃潤一も弓場佳世子も『和泉園子を殺害しようとしたけどしていない。しかし結果的に自殺してしまった』と証言しています。
しかし刑事の加賀と被害者の兄である康正は、ある証拠品から「自殺ではなく殺人だった」と結論づけるわけです。
しかし、その【証拠品】は何なのか。そしてどんな理由で「自殺ではなく殺人だった」と結論に至ったのかは本の中に書かれていません。
それらがこの小説の犯人を断定するための最大の謎です。
殺害までの流れ
事件が起きたときの時間軸を整理してみました。
PM10:30 園子が兄の康正に電話をする
↓
PM11:00 佃潤一が園子宅へ訪問。睡眠薬を飲ませ、殺害しようとする
↓
AM00:00前 弓場佳世子が殺害するために園子宅へ訪問。佃潤一と鉢合わせる
↓
AM00:20 佃潤一は先に帰宅し、弓場佳世子も片づけて帰宅(自身の証言)
↓
AM1:00 佃潤一はアリバイ工作のために帰宅
↓
AM1:30 弓場佳世子は佃潤一に電話
↓
AM2:00 佃潤一は知人と別れる
この時間軸の中で、2人は以下の時間帯に犯行が可能であったことが分かります。
◆犯人が佃潤一だった場合:AM2:00以降
◆犯人が弓場佳世子だった場合:AM0:20以降
犯人断定の証拠品「睡眠薬の袋」
小説の中で加賀が【事件は自殺ではなく殺人】だと判断できる証拠品のヒントが出てきます。
その証拠ヒントはズバリ・・・「睡眠薬の袋」です。
現場には2つの睡眠薬の袋が発見されています。
1つは睡眠薬を飲ませて殺害しようとした【佃潤一が開けた袋】です。
重要なのはもう1つの袋。もう1つの袋が誰が開けたかによって犯人が断定できるのです。
なお、袋の開け方によって開けた人が「右利きか左利きか」がわかります。それは作中で加賀刑事が康正に説明しています。
破断面や指紋の位置などから、その人の癖が大体わかります。園子さんの封筒を調べると、今あなたがやったのと、全く左右逆の動きをしていたことがわかります。だから左利きではないかと想像したわけです。
東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」201ページ
それをふまえた上で、現場にあった2つの睡眠薬の袋の開け方によって犯人が断定できるというわけです。
殺人か自殺の判断
現場にあった2つの睡眠薬の袋の状態によって「殺人か自殺の判断」ができます。
パターン① 袋1:佃潤一が開けた+袋2:佃潤一が開けた
→ 佃潤一による殺人
パターン② 袋1:佃潤一が開けた+袋2:弓場佳世子が開けた
→ 弓場佳世子による殺人
パターン③ 袋1:佃潤一が開けた+袋2:和泉園子が開けた
→ 和泉園子による自殺
ということで、【2つ目の袋を誰が開けたか】が重要となり、それを判断するのはそれぞれのキャラクターの「利き手」です。
つまり・・・
利き手がどちらかわかれば、ほぼ事件解決です。
3人の利き手はどっち?
ということで3人の利き手はどっちなのか。小説の中から該当箇所を見てみましょう。
佃潤一=右利き
例のビニール屑も、包丁の刃の右側に付着していた。
東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」95ページ
園子を殺そうとした偽装工作で使ったコードの削りカス。これが刃の右側に付着していたとしたなら、右利きの人の犯行。
これは佃潤一が自ら認めているので、佃潤一は右利きだとわかります。
弓場佳世子=右利き
彼女は右手で毛筆ペンを持ち、住所と名前を書いた。
東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」111ページ
佳世子が園子のお通夜に来た際に記帳したシーン。弓場佳世子は右利きだということが分かります。
和泉園子=左利き
「ところで妹さんは、何もかも左利きだったのですか」
「いや両親が矯正しましたから、箸とペンは右でした」
東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」201ページ
加賀刑事と兄の康正との会話です。基本的には左利きですが、箸とペンは右利きという少し珍しいタイプでした。
これじゃあ犯人が分からない?
しかしこうなると、2つ目の袋の開け方で「右利きの人が開けたか」「左利きの人が開けたか」が分かっても、犯人を断定はできません。
もし2つ目の袋の開け方が「右利きの人」だった場合、佃潤一か弓場佳世子の可能性になってしまうからです。
しかも、小説の中では2つ目の袋の開け方が明言されていません。
これじゃあ犯人が分からないじゃないか、ということになりますね。
しかし、加賀刑事は「犯人は断定できる」と言っています。また、小説の最後には康正も犯人を断定しています。
そして康正は手元のスイッチを見つめた。もはや何も迷うことはなかった。真実は完全に明らかになったのだ。
東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」348ページ
逆に考えると答えが出てくる
小説に答えが書かれていないにも関わらず、康正が犯人を断定できたということは、康正だけが見ていた事実があります。
それが「弓場佳世子に睡眠薬を飲ませるために、自分で睡眠薬の袋を開けさせた」シーンです。
彼女は「左手で袋を開けていた」ということです。
もしここで「右手」で開けていたら、佃潤一か弓場佳世子のどちらにも可能性がありますが、康正は犯人を断定できた。つまり片方の可能性に絞れた=「開けたのは右手ではなく左手だった」とわかります。
論理的思考で導き出したということですね。
ということで、弓場佳世子も実は和泉園子と同じく、文字を書くときは右利きだけど袋を開けたりするのは左利き、という珍しいタイプだったということです。
日本では小さいうちに矯正させる家も多いので、あり得る話です。
文庫版は難しくなっている
なお、文庫本版の一番最後に袋とじとして用意されている「推理の手引き」にも記載がありますが…
文庫本版では、犯人を断定するためのヒントが削られてしまっているそうです。
佳世子は(中略)袋を破り、中の粉末を口に入れ、グラスの水を飲んだ。
東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」348ページ
ここは本来「左手で袋を破り、中の粉末を口に入れ…」となっていたそうです。
それでも犯人が直接書かれていないことに変わりはありませんが、大きなヒントにはなっていたでしょう。
よって文庫本版はかなり難しくなっていたということですね。
まとめ
今回は小説「どちらかが彼女を殺した」の犯人と、そこに至るための解説を行いました。
- 和泉園子は自殺ではなく殺された
- 犯人は元カレの佃潤一
- 答えは書いておらず、論理的に導くしかない
必死に考えましたが、結局読み終わったときでは犯人はわかりませんでした。袋とじの「推理の手引き」を読んでもイマイチ理解できず、名探偵コナンへの道は険しいなと思いましたね。
他の加賀恭一郎シリーズについても書いています。お時間ある方はぜひご覧ください。
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