このページに書いてあること
「江戸川乱歩の最高傑作」とも呼ばれている小説「孤島の鬼」を読んだ読書感想文です。
書かれたのがなんと1929〜1930年という昭和初期の作品。
まず感想を言わせていただくと・・・
こんな話を昭和初期から作ってる「江戸川乱歩」って何者なんだよ。。
という感じでしたね。
昔の表現が頻繁に使われるため少し時間はかかりましたが、読み応えありました。
孤島の鬼 あらすじ
私(蓑浦金之助)は会社の同僚木崎初代と熱烈な恋に陥った。彼女は捨てられた子で,先祖の系譜帳を持っていたが,先祖がどこの誰ともわからない。ある夜,初代は完全に戸締まりをした自宅で,何者かに心臓を刺されて殺された。その時,犯人は彼女の手提げ袋とチョコレートの缶とを持ち去った。恋人を奪われた私は,探偵趣味の友人,深山木幸吉に調査を依頼するが,何かをつかみかけたところで,深山木は衆人環視の中で刺し殺されてしまう……!
出典:本書あらすじ
ネタバレありで感想
これ以降はネタバレを含みます。ご注意ください。
鬼ですね。本当に鬼。諸戸の父・諸戸丈五郎の悪業はまさに「タイトルに偽りなし」でした。
私がこの作品の中で一番気持ちを持っていかれた部分はここ。
諸戸丈五郎はなんて悪党だったのか、ということです。人殺しを依頼し、実際に丈五郎本人も人を殺しています。
しかし私的に一番許せないのは、自らの手でかたわ者(身体障害者)を作りだす、という行為です。
こいつ何なんですか?まさに鬼ですね。鬼っていうかクズですよ。
そして彼がそれほどの悪行を行った理由。
それが『自分がかたわ者で健常者に馬鹿にされた恨みがあった』ということ。
いや、わかります。それも酷い行為です。それも十分クズと呼べます。
しかしだからといって彼のやってることは到底許せるものではないでしょう。
物凄い嫌悪感を感じながらも、それゆえに引き込まれてしまった部分でもあります。そのぐらい驚く内容でした。
他の方のレビューなどを拝見すると「これは江戸川乱歩の最高傑作だ!」と書かれているレビューも多く見かけます。
そういった方々はきっと「これほどの悪を書いたことに対しての評価」なのかなと私は思いました。
最終的に丈五郎の精神は崩壊してしまい、その後然るべき処罰を受けたとあります。
しかし個人的には納得できないですね。
「丈五郎にはもっと地獄を見てほしかった」というのが正直な気持ちです。
また「孤島の鬼」の他のレビューを見ると、意外と同性愛のことを取り上げている方が多くいられるように感じます。
主人公の蓑浦に対する、先輩の諸戸の愛ですね。
きっと当時は今よりも同性愛が珍しかったのではないかなと思います。
現代のように情報が飛び交う世界でもなかったでしょうし、多様な考え方が少なかった時代だったはずです。
それが多くの人には新鮮で、興味を抱かせたのかもしれません。
現代ではボーイズラブ(通称BL)というジャンルが確立されたことからみても、このような同性愛を表現した作品に興味を持った人たちがいるかも…
と思いきや、すでに出版されていました。孤島の鬼のBLコミック。
つい『あるんかい』と声が出ましたよね。
「孤島の鬼」の評価 | |
---|---|
引き込まれ度 | (3.5) |
胸糞悪さ | (4.0) |
読みやすさ | (2.0) |
おすすめ度 | (3.5) |
まとめ
今回は小説「孤島の鬼」の感想をネタバレありで紹介しました。
- タイトルに偽りなし
- 鬼が非道ゆえに引き込まれる
- 切ないBL要素あり
- ぜひ漫画版の孤島の鬼も読んでみたい
物語の結末は概ね満足です。被害者であった秀ちゃんと蓑浦は一緒になり、財産ももらうことができて良かったと思います。
他にも小説の感想などをネタバレありでご紹介しています。お時間ある方は是非ご覧ください。
読書感想文シリーズはこちら
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