こんな方のために書きました
- 小説「出版禁止」を読んだ
- 読んだけど理解できなかったところがある
- 他の人の考察を読みたい
長江俊和さんのミステリー小説「出版禁止」を読みました。
作中で様々なトリックや言葉遊びのあった作品ですが、その中で「あれって一体どうゆうことだろう?」と気になった箇所があった方はいませんか?
ということで今回は、小説「出版禁止」の重要なポイントの解説と、本の中で明らかになっていない気になる点を考察しました。
本を読んでわからなかったところがある方や、気になった点があった方は、ぜひ最後までご覧ください。
出版禁止 あらすじ
著者・長江俊和が手にしたのは、いわくつきの原稿だった。題名は「カミュの刺客」、執筆者はライターの若橋呉成。内容は、有名なドキュメンタリー作家と心中し、生き残った新藤七緒への独占インタビューだった。死の匂いが立ちこめる山荘、心中のすべてを記録したビデオ。不倫の果ての悲劇なのか。なぜ女だけが生還したのか。
Amazon内容紹介より抜粋
重要なポイントを解説
内容は若橋が言うように「全て真実」として考えます。
心中は偽装だったのか?
熊切敏と新藤七緒の心中は偽装でした。
七緒は、自分の尊敬する女優「永津佐和子」にひどい扱いをする熊切を殺すために近づき、心中に見せかけて殺害したのでした。
若橋は新藤七緒を殺したのか?
新藤七緒を殺したのは若橋です。
彼は自身のルポタージュでもこのように「自分が七緒を殺した」ことを明記しています。下記発言の頭文字を拾っていくことで「私は、七緒をころした」になります。
私は、その顔から目を離すことができない。
七緒を限りなく愛おしく思えたから。
(中略)
ころがり落ちるように、布団の上に倒れ込んだ。
(中略)
しかし、口づけに応じてはくれない…。
ただ、目を閉じたままである。
長江俊和「出版禁止」229-230ページ
新藤七緒は若橋を愛していたのか?
彼女が生前に残した書記(316ページ)には、「若橋を愛してしまった」ということがわかる内容が記されています。
彼女が若橋を愛していたというのは事実でしょう。
若橋呉成はカミュの刺客だっのか?
若橋はカミュの刺客でした。
これは彼が獄中で書いた手記で、自身がカミュの刺客であったことを明記しています。また、彼の名前も「わかはしくれなり」→「我は刺客なり」のアナグラムになっています。
新藤七緒は刺客だっのか?
実はこれがとても難しい問題です。
【彼女は刺客だったか?】と言われれば「YES」ですが、【カミュの刺客だったか?】と言われれば「NO」となります。それが彼女の言い分で事実と仮定します。
しかしそうなると後の考察に矛盾が発生してしまいます。詳しくは下記の考察をご覧ください。
気になる5つの点を考察
若橋はどこで自分の使命に気づいたのか?
まず若橋が自分の使命、つまり自分が「カミュの刺客」だと気付いたことがわかるのが、以下の文です。
そしてもう一つは、この心中事件における、私の役割である。
長江俊和「出版禁止」206ページ
そしてその直前の行動として、心中事件を撮影したビデオを七緒と見ます。それまでは心中に対して疑念を抱いている状態で【まだ七緒がターゲット】だと理解していない状況です。仮に使命に気付いているなら「七緒の心中は偽装」だと確信しているはずです。
その間に七緒は若橋に以下の言葉を投げかけます。その内容は脈絡がなく、意味がわからない言葉ですが、これが「若橋の使命を思い出させるトリガーとなる言葉」だと推測します。
―あなたも見たくありませんか?目には決して見えない、人の心の中を。
長江俊和「出版禁止」204ページ
しかし、推測通りこの言葉が「使命を思い出させる言葉」だった場合、なぜそれを七緒が知っていたのでしょうか?七緒は「カミュの刺客」ではなかったはずです。
なおここが私にとって一番の謎です。
永津佐和子は殺されたのか?
殺された可能性が高いでしょう。
彼女が事故を起こしたのが若橋の犯行後です。つまり七緒(の生首)とのインタビューの映像や、若橋のルポタージュが表に出た後になります。それらの内容で「彼女が間接的に熊切の殺害に関わってる」ことがわかり、一部のカミュの刺客によって狙われた線が濃厚です。
若橋は「カミュの刺客」に殺されたのか?
これは「若橋の死にカミュの刺客は関係ない」と推測します。
留置場で自ら命を絶ったと思われる若橋。しかしそれは「カミュの刺客の仕業じゃないのか?」と長江さんが疑うような描写がありました。しかしもしカミュの刺客だったのであれば若橋のノートを処分しない理由がありません。
ノートはほぼ白紙だったため見逃した可能性もありますが、「カミュの刺客」とも呼ばれる者たちがそんな凡ミスをするとは思えません。
なぜ若橋は自分の使命を忘れたのか?
過去の大病が原因だと推測します。
若橋はフリーランスのライターになって後、大病を患っていたことが書かれています。その原因や詳細は書かれていませんが、この期間に彼は「自分がカミュの刺客」ということを忘れてしまった、と推測できます。
若橋呉成は狂っていたのか?
完全に狂っていたでしょう。
本の中で若橋のルポタージュを紹介した長江さんは「彼は狂ってなどいなかった」という言葉を残していますが、それは「ルポタージュは七緒と心中した後に生還したときのために作っていた」という事実に対して向けた言葉です。
そもそも首を持ち歩いたり、鍋にしてしまう人間が「狂っていない」わけがありません。
まとめ
今回は小説「出版禁止」のポイント解説と自分なりの考察を紹介しました。
考察に関しては著者に聞かないとわからないですが、是非読んだ方々と議論を交わしたいです。
また、別の記事でこの小説の感想を。それ以外にも、おすすめの小説をご紹介していますお時間ある方はぜひご覧ください。