いろいろ言いたいことがあります。
ミステリ小説としてはおもしろいですし、トリックが明かされたシーンを読んだときに漏れた『なるほどねぇ…』の声は、本気の『なるほどね』でした。
ストーリーのテンポも悪くないですし、犯人まで導いてくれるし、罪を犯した犯人の気持ちも共感できるぐらいクズも登場しましたし、ミステリ小説としては良い作品でした。
ただ。
それでも言いたいことあるんですよ、この『ジェリーフィッシュは凍らない』には。
ということで言いたいことを4つ書きます。
カタカナの登場人物、覚えづらい問題
これは人によると思うのですけど、
カタカナの登場人物って覚えにくくないですか?
「じゃあ海外の翻訳ミステリ小説とかどうするの」と言われそうなんですが、それは問題ないんです。もう最初からその意識で読み始めているので何も感じないんです。
しかし日本人の作家さんが書いた本で、いきなりカタカナの登場人物が連発してきたときは面食らいました。
フィリップって。レベッカって。ファイファーって。
逆に考えて、海外の作家さんの本の中にTsutomuとかYukikoとかIgarashiとか出てきたら外国人も”What?!”って言うじゃないですか。
“Who are you?!”って言うじゃないですか。
ここでストーリーも内容も完全に「海外の話だから日本のことは忘れて付いてきて!」って感じならまだ入れるんですが…
犯人を追う刑事がなぜか日本人なんですよ。
しかも「九条漣(くじょうれん)」ってホストか?みたいなカッコよすぎる名前の刑事なんですよ。
山田義男、高橋裕太、佐藤孝義、九条漣・・・日本人の中でも浮いちゃうぐらいの名前ですからね。マリア、フィリップ、九条漣、レベッカ、ファイファー…いや、浮きすぎでしょう。
そのせいで少し入り込めなかったです。
国名略称は本当に必要?
舞台はアメリカなんですが、その国名や地名を全て略称で表記していました。
アメリカなら「U国」。”United States of America”のUですね。
ロシアや日本は「R国、J国」。”Russia”と”Japan”の頭文字です。
これ、微妙に頭に入りにくくないですか?
もちろん意味は分かりますし、国名自体はそこまで重要でもないのでいいのですが…なぜにこんな表記なのでしょうか。
知人いわく『SFっぽさを出したかったんじゃないのか?』『現実世界ではなくパラレルワールドの雰囲気にしたかったのでは?』といっていました。
うーん、その可能性もありますが…まあ読みにくいですよね。
強調の点々多すぎ問題
小説を読んでいると、作者が強調させたいとき文章の右側に点々がついていることあるじゃないですか。
この点々って他のミステリ小説でも見る機会は多く、特に最後のトリックの解明や犯人の告白など、【どんでん返しされる一文】なんかに使われています。
読者に最大の衝撃を与えるために、作者がぶっ放す「特大かめはめ波」みたいなものですね。
この『ジェリーフィッシュは凍らない』は頻度が多すぎて逆効果です。
いたるところで「かめはめ波」打ってくるんです。そのせいで1つ1つの衝撃がかなり薄まってます。
点々を乱発されると『フフフ、こんなものですか』とフリーザみたいになってしまうので、「ここぞ!」というときに使ってほしかったですね。
最後のオチ
最後に犯人にたどり着いたマリアと漣の刑事コンビ。
そこで事件の全容が明かされるシーンは最後の盛り上がりとしてかなり良かったと思うのですが…結局犯人には目の前で逃げられてしまいます。
まあ正直に言えばその時点で『何をやってるんだ』とツッコミたくなりますし、いくらステルス機能付きのジェリーフィッシュだからって、そんな大きなものが近くにあったら気づくだろ、と言いたくなるのですが・・・
最後のシーンで警察の目の前で飛行船につかまり大空に逃げていく犯人と、それを『待てー!』と言って逃がしてしまう刑事。
あれ、これって・・・
いや「ルパン三世」じゃねーか。
ガッツリ本格ミステリだったのに、いきなり「ルパン、ルパーンー!」になっていて笑いました。
そういえばバラバラにされた死体がいましたね。
あれ、ゴエモンがやったのかな?
ただ犯人が逃げてしまうっていうのは新鮮で、個人的には好きでしたけどね。