こんな方々のために書きました
- 小説「奇面館の殺人」の(上)を読んだ
- 全部読んだけど他人の考察は気になる
- (上)の内容をおさらいしたい
館シリーズの9作品目「奇面館の殺人」(上)を読みました。
こちらは「時計館の殺人」以来となる上下巻で分かれた作品です。(講談社文庫)
上巻を読んだだけでは事件の全容は何もわかっておらず、考察も何もないぐらい話も進展していませんが…下巻に向けて自分なりの考察をしてみようと思います。
予想してみて、もしもそれが当たったら…私も小説を書いてみようか。いや、探偵として開業してみるのもアリかもしれません。
なんてことを考えつつ、少ない情報で予想と考察をしてみます。ぜひ最後までお付き合いください。
奇面館の殺人 あらすじ
奇面館主人・影山逸史が主催する奇妙な集い。招待された客人たちは全員、館に伝わる“鍵の掛かる仮面”で顔を隠さねばならないのだ。季節外れの大雪で館が孤立する中、“奇面の間”で勃発する血みどろの惨劇。発見された死体からは何故か、頭部と両手の指が消えていた!
引用:綾辻行人著「奇面館の殺人(上)」
上巻での情報まとめ
まず今回の情報を自分なりに整理してみます。まずは登場人物です。
登場人物
- 招待客
- 鹿谷門実(小説家)
- 創馬(会社社長)
- 忍田天空(マジシャン)
- ミカエル(建築士)
- 算哲教授(変人)
- ヤマさん(元刑事)
- 影山逸史(奇面館の主人)
- 新月瞳子(学生アルバイト)
- 鬼丸光秀(奇面館の執事)
- 長宗我部(奇面館の管理人)
- 日向京助(小説家)
奇面館の住人
来れなくなった客
そして今回の肝であり厄介でもある仮面の割り当てが以下の通りです。
仮面の設定
- 創馬(歓びの仮面)
- 忍田天空(驚きの仮面)
- ミカエル(懊悩の仮面)
- 算哲教授(嘆きの仮面)
- 鹿谷門実(哄笑の仮面)
- ヤマさん(怒りの仮面)
ここが結構ややこしいですね。そしてこれまでに起きた出来事が以下の通りです。
発生した出来事
- 日向京助の代わりに鹿谷門実が奇面館の催しに参加。
- 参加者は睡眠薬を飲まされ、さらに仮面を被らされる。
- 館の主人(と思われる)の死体を発見する。その死体には首と指がなく、判別不能。
- 大雪と電話の破壊のため、参加者全員館に立ち往生。
さて、ここまででの気になった謎と個人的なそれに対する答えを書いてみます。
気になる点を3つの点を考察
質問の意味は?
多額の金を用意して6人を招待した影山逸史。そもそも彼の考えがまったく理解できない。
特に意味が分からないのは、対面の間で彼が鹿谷門実に告げた自身の恐怖と考えに関して。
彼にとって『顔がそっくりかどうか』というのはあまり意味を成していないと言っています。一方『本質は表層にある。』とも言っています。これはシンプルに矛盾していませんでしょうか?中身が重要ではなく、顔が似ている必要もない。じゃあ何を判断するのか?
そしてその後、彼は鹿谷にある質問をしています。それがこちら。
あなたは今、見知らぬ三叉路に立っています。進行方向で二手に分かれる道のうち、右側の道には急な階段が見える。左側の先には数多くの目が転がっている。(中略)ここでさて、あなたはどの道を選びますか。
引用:綾辻行人著「奇面館の殺人(上)」
この質問に「左の道を選ぶ」と回答した鹿谷に小切手を渡します。それ以上の質問はありませんでした。ということは、影山は鹿谷のことを《もう1人の自分》と判断しなかったということです。
ただ、こんな質問で本当に「もう一人の自分」なんてわかるのでしょうか?というか「本質が表層にあるなら」こんな心理テストこそ矛盾しているように感じます。
強いて言えば「この質問の意味自体を知っている人」を探しているのかもしれません。でもだとしたらわざわざ館に呼ぶ必要もないはずです。
私が思うに影山逸史はそもそも《もう一人の自分》なんて探していないのだと思います。この対面には別の意味がある、もしくはまったく意味はない、のどちらかです。
死体の正体は?
上巻で最も大きい謎はこれでしょう。あの死体は影山逸史だったのかどうか?
首と指がない、ということで本人と判断できない。そして判断できなくさせる理由は「実は死体は影山逸史じゃないのでは?」と思わせるもの。普通はそのように考えます。
しかしそれだと明らかに普通過ぎます。これで「やっぱり死体は影山逸史じゃない別人でした!」になるとさすがに安易すぎます。しいて言えば「館シリーズらしくない」。よってあの死体は影山逸史本人だと推測します。
しかし今回、鬼丸さんと長宗我部さん、新月瞳子以外は影山逸史自身が館に呼んでいます。しかも館内のルールがいくつかあり、全てが異様なものです。
なので普通ならば呼ばれた方が被害者に回るほうがしっくりきます。ルールは館にいる人が作ります。もし今回が2回目以降の人が主人に手を下すために色々ルールに合わせ計画を立ててきても「今年から中止です」と言われてしまえばすべてが崩れます。なのでやはり招く側が有利…ですが今回亡くなったのは影山逸史、だとすれば…
まず怪しいのは館にいるメンツです。鬼丸さん、長宗我部さん、瞳子。この3人はルールを知っている側。よって計画も立てやすい。また外部からの来客中であれば自分らが疑われる可能性も下がります。
ただし、やはり今回急遽参加となった瞳子は可能性が低いと思います。そうなると、鬼丸さん、長宗我部さんの二人が最初の容疑者です。
次に今回の催しに参加した6人。さすがにここで鹿谷門実が犯人ってことは無いと思うので(彼が犯人だったらホントに超特大どんでん返しです)残りは5人。
で、先ほど書いた通り、新規の参加者は「館ではどんなことがあったか」を事前に聞かない限り勝手がわからなく、そもそも招待されないと来ることができない。
今回の新規参加者は元刑事のヤマさん(怒りの仮面)。鹿谷門実のように別人と入れ替わってきた、という方法もなくはないですが、彼は鬼丸さんと一緒に館に来ているので、素顔を見たらすぐにばれてしまうはず。よってやはりヤマさんも除外です。
残りの四人に関しては正直全員怪しいですし、犯人から除外できるほど情報も明らかになっていません。よって4人の参加者全員が容疑者です。
そしてもう一人。可能性があるのが作家「日向京助」。彼は館に訪れたこともあるし、招待されたということであれば事前に鬼丸さんにも会っています。なのでその際に催しに関して聞くチャンスはあったはずです
個人的に怪しいのは鬼丸さん。館シリーズの最長作品である「暗黒館の殺人」に登場した鬼丸老という登場人物。ここら辺を考えてみても今後真実に関わってくる可能性は大いにあります。
影山逸史の正体は?
そして別の視点からもう1つの考察。それは影山逸史の正体について。
私は影山逸史=日向京助と推理します。
その理由は名前です。影山と日向。日の光によってできる影、つまり陰と陽。コインの表と裏のような関係性です。これは偶然ではないと思います。
また日向を「ヒナタ」ではなく、あえて「ヒュウガ」と読ませているところも怪しい。日向京助はペンネームのはずなので、本人が勝手に作ることができる名前ですからね。
するともう一人、名前関連で登場するのが学生アルバイトの新月瞳子。ここには月が含まれています。
日と影、そして月。ただの名前遊びか、それとも…?
まとめ
小説「奇面館の殺人」の(上)を読んで気になった点の考察をしてみました。
結局あの死体が影山逸史かどうか?でその後が大きく変わりそうです。あれが影山逸史でなければ次の悲劇が起こる可能性も上がります。
今回読んでくださった方は、是非(下)を読んだ後の記事もご覧ください。
「奇面館の殺人」(下)に続く
https://deradesu.com/kimenkan/