このページに書いてあること
今野敏さんの小説「殺人ライセンス」を読んで書いた読書感想文です。
高校生、探偵、刑事の3人が事件の真相に迫っていく警察小説&サスペンス。
ネットの特殊な人の繋がりと、現実の人の繋がりを対比させつつ、その両方に焦点を当てながらのミステリー。
おもしろすぎて気づいたら連休終わってました。
小説「殺人ライセンス」感想
この小説、深いです。
殺人ライセンス、なんて聞いてしまうと「サイコパスが殺しまくるちょっとグロい小説かな」なんて思いますよね?
『俺には殺しのライセンスがあるんだよー!』とか犯人が言っちゃって。
『人間に…そんな権利はないのよっ!』とかヒロインが言っちゃうような。
そんな小説を想像するんですけど、全然違うんですね。
話のベースは「殺人」でしたが、それに関わる人やストーリーは非常に温かいものがありました。
高校生のキュウ
登場人物のひとり。パソコンが趣味の高校生、キュウ。
普通の高校生でありながら、クラスメートの父親を前にしても萎縮せず、ちゃんと礼儀正しい。頭も悪くないし、ちゃんとした倫理観も持ってる。
好きな女の子は眩しすぎて直視できず、小説の終盤にとうとう下駄箱で告白。
『俺が好きなのは、おまえなんだよ』
なんですかこの甘酸っぱさは。ちなみにこの本のタイトル「殺人ライセンス」ですからね。
こいつは絶対に真っ当ないい人生を送る。そう確信しましたよ、俺は。
探偵の相沢
リストラされてしまった相沢優一。
45歳という、なにかに挑戦するには遅いとも言えるし遅くないとも言える微妙な年齢。
リストラをチャンスとらえ、ずっと心にあった「探偵」という職業を目指す…
妻からは大反対。まあ娘も高校生ですからね。大学に進学するとなるとお金も必要になります。
家のローンもあるんだったら確かに怖い選択のように思いました、俺も。
ただやっぱり同じ男として気持ちもわかりました。
どうしても男目線で見てしまうので、全てを否定する奥さんには
「なんで応援してあげないんですか!奥さん!旦那さんの夢、一緒に叶えましょうよ!」
って気持ちで読んでましたが。それに対する奥さんの返答が…
「最初に相談しなかった」
「大切なことを一人で決めた」
「勝手に進めて一緒に戦うなんてできっこない」
俺ならその場で土下座してましたね。正論すぎて。
探偵としての初仕事が「土下座で謝罪」ですよ。
人間関係の繋がり
この相沢と奥さんのやりとりもそうなんですが、小説を一言で表すなら「人間関係の繋がり」
インターネットの誕生で、家の中にいても世界中の誰かと繋がれる。
だけどその繋がりなんてほとんど「まやかし」。嘘も虚栄もやりたい放題ですしね。
そしてインターネットの普及で現実の顔を合わせたコミュニケーションが減る。
だから社会に出た時にコミュニケーションができずに壁にぶち当たる人も多い。
企業の採用基準に「コミュニケーション能力」なんて項目ができるぐらいですからね。
相沢優一も妻と娘が同じ屋根の下で生活しているにも関わらず、互いに孤独を感じてしまっています。
長年一緒にいる夫婦ですらこれですからね。繋がることの難しさですよ。
だから最後に相沢が娘との距離を縮められたのを見て、やっぱり気持ちを伝えるには直球勝負も大切なんだな、と。
「殺人ライセンス」なんて物騒でサイコパスな名前なのに優しい終わり方。いい詐欺師にお金取られた気分です。
それにしても近年の問題ともいえる「人の繋がり」を題材にした素晴らしい作品だな。今野敏さん、さすがだなぁ。
って思うじゃないですか。何と発行されたのは20年以上前。
天才すぎてファンレター送りつけてやろうかなと思いました。
「殺人ライセンス」は文庫本&電子書籍で
今野敏さんの「殺人ライセンス」は文庫本の他に電子書籍でも読むことができます。
他にもおすすめ小説の紹介や、感想を書いています。お時間ある方はぜひ読んでくださいね。
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