いや、奥さんじゃないって気づくだろ。
と声が出てしまった折原一さんの小説『蜃気楼の殺人』を読みました。
この「蜃気楼の殺人」というタイトルは改題であり、元は「奥能登殺人旅行」。
タイトル変えないほうが良かったのでは?と思ったのは私だけでしょうか。
ある夫婦の銀婚旅行中に旦那のほうが殺害される事件が発生。しかも妻の方は行方不明。
そんな不穏すぎる事件を実の娘が追う・・・というミステリー要素たっぷりの作品でした。
ただ、ツッコミどころは多いです。意味わからな過ぎて震えました。
ということで、折原一「蜃気楼の殺人」のツッコミたい感想を順に紹介します。
「蜃気楼の殺人」感想
そもそもは「新婚旅行でのありえない勘違い」から始まったミステリーなんですが、もう一回言いますね。
エッチしようとした相手が「自分の奥さんじゃなかった」なんてことあります?
ファンタジーすぎます。これはありえない。
いくら新婚初夜とはいえ、緊張していたとはいえ、酔っていたからとはいえ・・・相手が自分の奥さんじゃないって気づかない意味が分からないですよね。
部屋を暗くしてたから?そんな相手も見えない暗い部屋って・・・そんな暗視ゴーグル必要な部屋あります?
まだ「酔ったふりして襲ってしまった」というほうが現実味があります。
そういう動画なら見たことありますから、FANZAで。
そしてさらに「間違って抱かれた妻の旦那」が「相手の妻を犯す」っていうのもなんか展開が訳わからな過ぎて…
これがこの本の冒頭だったので、いきなり『どんな話だよ』と。
まあ話の展開を複雑にするには「ありえない展開」が入ってくるのも仕方ないですが、ちょっとモヤモヤしました。
万里子とまり子
ここも話を複雑にするためのトリックなんですが・・・やはり引っ掛かりますよね。
明らかに「同じ名前なんて絶対に何かあるじゃん」と、ミステリー小説好きの人からしたら警戒させる設定です。
そして予想通りに2人がリンクするという。この違和感に引っ掛かってた人はきっと多いと思います。
お母さんの文恵
一番かわいそうなのが万里子の母親である文恵さんですよね。
自分の旦那が間違えて抱いてしまった女性の旦那に犯されてしまい、その旦那はずっと二重生活をしていて裏切られ続け、しまいにはその事実を知らされ、自分の旦那を殺した女だと世間から誤解されて、最後には崖から落とされて殺される。
これ、本気で言ってます?
このなんの罪もない女性がここまで不幸を背負って、それ以外の人間が勝手に好き勝手やって犯罪まで犯して・・・
結果として万里子も『結婚します』とか言ってハッピーエンド見たくなってますけど。
これをハッピーで終わらせたら、文恵さん可哀そうすぎませんかね?
めちゃくちゃ意味が分からなかったところ
話の終盤。
万里子が佳代の住んでいる家を突き止め、その家に突撃したシーン。
その時こんなシーンがありましたのを、小説を読んだ方は覚えているでしょうか?
体を引く時に、ふと表札に目が行った。「川崎」。はて、どこかで耳にしたことがあるような名前。そうか、ここは川崎市内なのだ。
引用:折原一「蜃気楼の殺人」講談社文庫
これ、どういうことですか?
なんで表札に「川崎」と書いてあったら『あ、ここは川崎市なんだ』ってなるんだよ。
じゃあなにかい、宇都宮さん家の表札見たら『あ、宇都宮市きたんだ』ってなるんかい。帰りに餃子食べるつもりかい。
ってツッコみたくなりました。表札にたまに住所書いてある方もいますが・・・ねぇ?
苗字の部分に触れずに住所だけ話に出てくるのはおかしいですよね。
「川崎」って苗字から「川崎まり子」を連想させたくなかったのもわかりますが、それにしても苦し紛れすぎる一言でしたね。
でもまあそれもあって、折原一さんらしい「読者の脳をひねくり回す」ような話の展開は健在でした。
ただ、キャラクターに現実味がないというか、微妙におかしなやつばかりで読んでいて疲れましたね。
だって新婚旅行で奥さんほおっておいて男同士で飲み明かすって。
この時点でだいぶ意味わかりませんからね。
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