このページに書いてあること
道尾秀介さんの小説「カラスの親指」を読んだ読書感想文です。
ここまで途中までの印象と読み終わった後の印象が変わる作品も珍しい。
色々どんでん返しなところがありますが、全ての伏線を綺麗に回収していく展開は職人芸です。
最後はマルっとひっくり返されるストーリー。
まるで着ていたジャケットがリバーシブルの裏面だったような感覚でした。「逆か!」っていう。
小説「カラスの親指」感想レビュー
いや、ヘビーすぎる。勘弁して ─
最初読んでいて思った感想はまさにこれです。
もう前半の1/4ぐらいまで話がとにかくヘビーすぎる。見てください、これ。
不当な借金を背負い、奥さんが病気で死んで、一人娘も放火されて死亡。さらには1人の女性を自殺に追い込んだ男。
奥さんが他の男のところに行き、覚醒剤を使うために借金し、戻ってきたものの結局自殺。そんな奥さんを思い続けた男。
そんな2人が主人公って。
過酷な人生に「悲しみ」や「つらさ」をトッピング。さらにヤクザに追われてるという「恐怖」も追加ですか。
見ただけで胃がもたれて吐きますよ。
前回「新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)」という本を読み、あまりのヘビーさに心が疲れていた自分。あらすじとか読まずにとりあえず手に取った本がみんなヘビー級で…
で、そんなツラい人生を送ってきた男たちなんですが、読んでる時にどうも好きになれない。
だって詐欺師ですからね。結局のところ。
生活費が足りなくなってきた、という理由で「テツさんが空き巣をして現金を持ってきた」というシーンがありました。その時仲間のみんなは「さすがテツさん!」みたいなテンションだったけど、
ちょっと待て。
そのお金はどっかのおばあちゃんが孫にランドセルを買うために使わずに貯めてた年金なのかもしれん。
そのお金は子供の病気を治すために両親が必死こいて稼いだ金かもしれん。
そう思うと喜べない。なんて身勝手な奴らだと。
だから最後のテツさんのセリフに救われましたね。あー自分でわかってるんだなぁって。
人は人を信じなきゃいけない。それを利用して飯を食う詐欺師は、人間の屑です。自分が二十年以上、タケさんが七年間やってきたのは、救いようのない、最低の行為なんですよ。
道尾秀介. カラスの親指. 講談社.
この考えにたどり着いたからテツさんは今回の計画を仕組んだのかもしれない。
てかきっとこの人IQ200くらいあるぞ。
それにしてもテツさんはどういう気持ちで接してたんだろうか。娘たちに。
いくら何年も離れてたとはいえ父親だし、ましてや姉のやひろの方は幼少期に一緒に生活していたわけだし。
途中まひろがタケさんの布団に潜り込むシーンがありましたが、俺なら多分泣く。
本当はその役目は俺だったのにって。嫉妬という意味ではなく過去の過ちを犯した自分に対して泣く。
そして娘と2人で買い物。娘が作ってくれた料理。泣く。俺なら泣く。
まあもしかしたらテツさんも隠れて泣いていたかもしれないですね。そういうシーンがないだけで。きっとそうだと思う。
テツさんは死んでしまいましたが最後は全てが丸くおさまる終わり方。
あのヘビーな展開から一転、春の陽気を感じさせるほっこりな終わり方でビビりました。
ただ、ここまで完璧だとちょっと安っぽくなるというか、ご都合主義を感じざるえませんが…
でも猫が生きてたんだから。猫が殺されてないんだから。猫が幸せならOKです👍
小説「カラスの親指」は文庫本&電子書籍で
道尾秀介さんの小説「カラスの親指」は文庫本の他に電子書籍でも読むことができます。
他にもおすすめ小説の紹介や、感想を書いています。お時間ある方はぜひ読んでくださいね。
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