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【徹底考察】小説「出版禁止 死刑囚の歌」ネタバレで考察&解説|長江俊和

【徹底考察】小説「出版禁止-死刑囚の歌」ネタバレで考察&解説|長江俊和
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このページに書いてあること

小説「出版禁止 死刑囚の歌」の重要なポイントの解説と、本の中で明らかになっていない気になる点を考察しました。

長江俊和さんのミステリー小説「出版禁止 死刑囚の歌」を読みました。

まさかの技法で真実が隠されていたミステリーファン必読の本でした・・・が。「あれは結局どんな意味だったのだろう?」と気になっている方はいませんか?

ということで今回は、小説「出版禁止 死刑囚の歌」の気になった点を徹底考察しました。

本の中で明らかになっていないメッセージや疑問も考察し、解説します。




出版禁止-死刑囚の歌 あらすじ

幼児ふたりを殺した罪で、確定死刑囚となった男。鬼畜とよばれたその男、望月は、法廷でも反省の弁をひとことも口にしなかった。幼い姉弟は死ぬべき存在だった、とも――。本書の「編纂者」はこう書いている。「人の悪行を全て悪魔のせいにできるなら、これほど便利な言葉はない」。あなたには真実が、見えましたか?
Amazon内容紹介より抜粋

なお、この「出版禁止-死刑囚の歌」の前に、禁止シリーズとして「出版禁止」が発刊されています。

話は繋がっておらず、続編ではありませんが、その本の考察もしました。

出版禁止を読んだことがある方はこちらもどうぞ。

小説考察「出版禁止」ポイント解説
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重要なポイントと考察&解説

これ以降は小説のネタバレを含みます。ご注意ください。

小説「出版禁止 死刑囚の歌」で本の中では紹介されず、読み終わった後に気になった点は以下の通りです。

  • 和歌「鬼畜の歌」に隠されたメッセージは?
  • 編纂者「伊尾木誉」が最後に会った女性の正体は?
  • 年表の中の矛盾とは?
  • 「あの人」の正体は?

和歌「鬼畜の歌」に隠されたメッセージは?

「鬼畜の歌」として紹介された、望月辰郎の詠った和歌「獣の鉈」。

全て日本語に変換すると、以下の通りになります。

おにとかす へてはくらやみ いまもなお わったかがみに じごくうつりて

かわもうく いはなきかかん せいのちを たつことがなき ながれてはきえ

みみすまし さんずわたしの ねがいとし まわたしのしょく ざいせしのどく

ちへどふく しゆうはてたり もりのおく しろににじむな しいろのあかよ

てつごうし あくまにすぎる あだうちか つためもにくき ごうのまどより

しごにくし みのすみずみも きよめられん さたちきるかみ るいるいのしし

じゃのしせん ぶつてとまらず やわいかわ すれてにじむち このいきとまる

あねがふす みなきみはいき ろうしょうじょ いのちにおこれ てようやくもに

かたきした とりっくのごとき あかきふだ らくになりたし よつのまなこ

くれゆくも うすくたつきり やみふかき ようかにあえる のろいぐさかな

この中に、意味がとれる言葉をピックアップしていくと・・・

おにとかす へてはくらやみ いまもなお わったかがみに じごくうつりて

かわもうく いはなきかかん せいのちを たつことがなき ながれてはきえ

みみすまし さんずわたしの ねがいとし まわたしのしょく ざいせしのどく

ちへどふく しゆうはてたり もりのおく しろににじむな しいろのあかよ

てつごうし あくまにすぎる あだうちか つためにくき ごうのまどより

しごにくし みのすみずみも きよめられん さたちきるかみ るいるいのしし

じゃのしせん ぶつてとまらず やわいかわ すれてにじむち このいきとまる

あねがふす みなきみはいき ろうしょうじょ いのちにおこれ てようやくもに

かたきした とりっくのごとき あかきふだ らくになりたし よつのまなこ

くれゆくも うすくたつきり やみふかき ようかにあえる のろいぐさかな

この中に、意味がとれる言葉以外を排除し、補足していくと・・・

すへ(べ)て おわった
もうくいはなき いのちたつことが
わたしのねがいと わたしのしょくざい
ふくしゆ(ゅ)うは むなしい
あくまに うちかつため にくき
れんさたちきる
せ(ぜ)んぶ わすれて
すみなきみはいきろ ようやく
たとりっ(つ)く ふだらくに
もうすく(ぐ) きよ(ょ)うかにあえる

これらを漢字になおし、意味がわかるように句読点をつけると・・・

全て終わった。悔いはなき。命たつことが私の願いと私の贖罪。
復讐は虚しい。悪魔に打ち勝つため、憎き連鎖断ち切る。
全部忘れて、須美奈、君は生きろ。
ようやく辿り着く、補陀落に。
もうすぐ今日香に会える。

これが、和歌に込められた望月の真のメッセージです。

タイトル「獣の鉈」の意味は?

「獣の鉈」の中に入っている【けだもののなた】がヒント。

「この和歌に【もののな(物の名)】という技法でメッセージを隠したよ」

という望月のメッセージでした。

編纂者「伊尾木誉」が最後に会っていた女性の正体は?

女性の正体は、小椋須美奈でしょう。

彼女はインターネットのブログにて望月辰郎に面会した内容を投稿しています。(伊尾木の問いに否定しなかっただけで確証はない)

その面会の中で、望月辰郎は面会者に対し、こう言葉をかけています。

あなたが元気で健やかに生きてくれるのが、私の何よりの希望なのですから
引用:長江俊和 「出版禁止 死刑囚の歌」 新潮文庫

そして本の最後の章「渡海」で、望月辰郎は小椋須美奈に対し、このように言葉をかけています。

あなたが元気で健やかに生きてくれるのが、私の何よりの希望。
引用:長江俊和 「出版禁止 死刑囚の歌」 新潮文庫

ほぼ同じです。つまり・・・

最後に会っていた女性=面会者=小椋須美奈

年表の中の矛盾とは?

編纂者の伊尾木誉が、【追記】にて、年表に対する違和感を言葉にしています。

年表をまとめている時に、その記述が明らかに矛盾していることに気がついたのだが、何かの間違いだと思っていた。
引用:長江俊和 「出版禁止 死刑囚の歌」 新潮文庫

この「矛盾」とは一体何なのか?

その矛盾とは、「殺された姉弟の他に子供がいた」という事実へのヒントです。

まず、本の中に「妻が消えた理由」というノンフィクション記事があります。その中で、旦那の暴力に耐えかねて家出した女性「M子」が登場します。

その中の出来事を一覧にすると・・・

  • 1986年、旦那がM子の捜索を依頼
  • 2ヶ月後、M子を発見
  • 発見時、9ヶ月の赤ちゃんがいる

なお、その記事の最後に、【M子=誘拐事件の被害者の母親=小椋鞠子】と書かれています。

ということは、普通に考えたらこの「9ヶ月の赤ちゃん」が長女の小椋須美奈ちゃんのはずです。

しかし、このM子発見時の様子を見る限り、以下の記述から季節は【春から夏の間】だと推測できます。

外からでは、家のなかはよく見えない。青々と生い茂った木々が堀から飛び出しており、庭が広いことは分かる。
引用:長江俊和 「出版禁止 死刑囚の歌」 新潮文庫

さらに・・・

M子と二人、近くにあった遊歩道の、木陰のベンチに腰をかけた。
引用:長江俊和 「出版禁止 死刑囚の歌」 新潮文庫

このことから、【1986年の春から夏時点で生後9ヶ月の赤ちゃん】は【1985年生まれ】だと推測できるのです。

もしこれが【春から夏】ではなく、10月といった【秋】だったとしてもの話だったとしても、誕生は【1986年生まれ】。

しかし年表には、1987年に小椋須美奈ちゃん誕生、とあります。

つまりこの矛盾が、「殺された姉弟の他に子供がいた」のヒントになるのです。

「あの人」の正体は?

A子の日記に登場していた「あの人」とは、【編纂者「伊尾木誉」が最後に会った女性】です。本人が伊尾木に証言しています。(確証はない)

つまり、

あの人=伊尾木誉が最後に会った女性=小椋須美奈

です。




まとめ

長江俊和さんの小説「出版禁止 死刑囚の歌」の重要なポイントと、本の中で明らかになっていない気になる「4つ」の点を考察しました。

実は本の中にはまだ「わからなかった真実」が残っていますが、考察してもわからなかったのでギブアップです。

内容は重く暗いものですが、謎が明らかになる時の快感がたまらない長江俊和さんの作品。

次も楽しみです。


禁止シリーズに関する記事はこちら

【徹底考察】小説「出版禁止」気になる点をネタバレで考察&解説|長江俊和

【感想】小説「出版禁止」のレビュー|長江俊和

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