人間の闇を集めてみたら…こうなりましたっ!
という感じのサスペンスミステリー短編集『掲載禁止』を読みました。
感想を一言で表すなら、
「読みたくないけど読みたいエグさ」。
現実にこんな話があったら嫌だなぁ、というストーリーで「爽やかさ」や「感動」からは真逆にある作品でした。
短編集ということで1つ1つは読みやすく、目を背けられない怖さがあっておもしろかったです。
ということで短編1つ1つの感想を書いていきます。
『掲載禁止』ネタバレで感想
原罪SHOW
しょっぱなから「エグさ」が飛ばしすぎでした。
内容自体も全然救われない話で嫌なものなんですが、「人の死を見るツアー」という『なんかこの世のどこかではあるのかもしれない感』がやたら怖いです。
まあいわゆる「〇人ショー」を題材とした小説はほかにもありますし、目新しさはないんですが…
「まったく非の無い被害者」と「ビジネスとして楽しんでやっている加害者」の対比がエグすぎて最悪でした。
まあ空気を読まないで言わせてもらえば「主催者側も手荷物検査しないんかい」と思いましたけど。
マンションサイコ
屋根裏に30年住んでいました、は違う意味での「エグさ」でしたね。
読んでいる途中にふと天井見ちゃいましたから。『穴とか開いてないよな?』と。
ここでも空気読まないで言わせてもらえば、気づきますよね。
そうとう天井が厚ければわからないかもですが、多少動けば音もするだろうし、きしむ音などすれば人間とは思わないにしても「え?ネズミとかいない?」と不安になると思います。
それをバレずに30年間って。忍者かな?
ただ「老婆になっていた」ってオチはゾクゾク度高めです。
屋根裏に老婆がいるって・・・
「屋根裏にいてほしくないものランキング」なら余裕で1位取れますよ。
斯くして、完全犯罪は遂行された
あれ・・・全然覚えてない。
今感想を書くために終盤の少し前から読み始めましたが、それでも全然終わり方を覚えていなかった…そのぐらい印象がなかったのだと思います。
他の短編は「もしかしたらありえるかも?」という絶妙なリアルさがありましたよね。
しかしこの話は「実はだましていたのよ(女)」→「実は俺がやらせていたんだ(男)」→「実は私が洗脳していたのよ(別の女)」と、展開が安易だったのも微妙だった理由かもしれません。
杜の囚人
この話が今回の短編集で一番好きでした。
ずっと心配していたんです。妹さんを。
お兄ちゃんのために食事を用意するなんて、なかなか健気でいい子じゃないか、と。
だからそんなヤバい奴の記憶が戻ったら、君が襲われるぞ、と。
そしたら「女装したヤバい奴」と知って脳が混乱しました。そんなやつが「お兄ちゃんお兄ちゃん」とか言ってたとか怖すぎるだろ。
しかも近くの港に行って新鮮な海鮮を買ってきたとかも言ってましたからね。
店の人も驚いて『ぎょぎょぎょ!』とか言ったんじゃないですかね、魚屋だけに。
ただ終わり方はちょっと微妙でした。
悪の組織みたいな感じで「実は我々が操っていたんだよ」となると、今までのクレイジーな世界観から現実に引き戻されて冷めます。
というかさっきの短編と同じですね、展開が。
掲載禁止
本の表題ともなった短編「掲載禁止」。
これもなんでしょうね…結局またさっきの「実は私が騙していました」と同じですよね。
途中まではかなり引き込まれ「タナカ」なる人物がヤバい奴だった、となったときは『いやこれは怖すぎる』とハラハラしましたが…
終盤の「結局私が騙していたのよ」って流れは盛り上がりに欠けましたね。
だったらシンプルにタナカがめちゃくちゃヤバいことをしまくって怖い印象を残した結果、「実は撮影でした」ぐらいのほうが好きでした。
好きな短編、嫌いな短編ありましたが、全部スリルに関してはメーターを振り切っていて良かったです。
一気読みでした。テンポもよいし、著者の「とにかくビックリさせてやろう」という熱をバチバチと感じました。
おかげで何度もびっくりして、あやうく言いそうになりましたからね。
『ぎょぎょぎょ!』って。
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