これ一作目ですよね?エグすぎませんかね?
警視庁捜査一課の警部補、姫川玲子が凶悪な難事件を解決していく警察小説『ストロベリーナイト』
きっとこのタイトルを聞くと竹内結子さん主演の映画やドラマを思い出す方も多いと思います。それらの原作となる小説です。
小説『ストロベリーナイト』を読みましたが・・・
描写はかなりグロイです。胸糞もなかなか悪いです。しかしシリアスさのオンとオフの緩急が上手すぎて、目が離せなくなる良作でした。
ストロベリーナイト あらすじ
溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された!警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉「ストロベリーナイト」が意味するものは?クセ者揃いの刑事たちとともに悪戦苦闘の末、辿り着いたのは、あまりにも衝撃的な事実だった。
出典:AmazonBOOK 内容より
ネタバレありで感想
まさに絶妙なバランス。「明」と「暗」が分かれ、しかもその色も濃い。一気読みでした…
登場人物の魅力が光り過ぎてました。それに対比してかなり黒すぎる事件。
警察小説の中では本当に好きなシリーズとなりそうです。
登場人物について
まず。とりあえず。これだけは言わないといけない。
主人公の姫川玲子が可愛い。
可愛いというよりカワイイというニュアンスでしょうか、ところどころの描写がすごくかわいい。事件はとんでもなくエグいんですけど。
見た目も長身の美人と書かれており、2人もの部下に惚れられるところから相当でしょう。
しかし特にかわいいと思ったのは「仕草」や「セリフ」。
飲み会で部下の『玲子は渡さんッ』というセリフを聞いて、彼女はただコクン、コクンと頷きます。
何かを言うわけでもなく、顔を赤くしてコクン、コクンと頷く…
コクン、コクンと・・・頷く・・・?
そして事件解決後の病室にて。
会いに来るというお調子者の部下に対して玲子の言った『こ、な、い、で。』というセリフ。
『来なくていいわよ。』ではなく『こ、な、い、で。』です。
こ、な、い、で・・・・?
あのエグすぎる殺人事件を追う刑事が。長身の美人が。
いや可愛いすぎますよね。この可愛さに気づいたオジサンたちのにやにやした顔が浮かびます。俺がその顔してますから。
この可愛さに気づいた皆さんは、きっとコーヒーの違いとかもわかる紳士です。
ベストシーンについて
玲子が警察官を志すことを決めたシーン。
あのシーンがこの小説の中でのベストシーンでした。
玲子に対して敬礼する警察官たち。やはり正義の味方はかっこいいです。
警察官になりたいと思った怜子の気持ちもわかりますし、あんな姿を見たら殉職してしまった警察官のご遺族の気持ちも少しは軽くなると思います。
同僚刑事について
そしてその玲子を支える「姫川班」。
役割がしっかり決まっていたのがとてもいいですね。玲子自身も言っていた通り、各メンバーが家族のような役割をしており、みんなが玲子を支えているのがよくわかりました。
しかし1人お気に入りのキャラをあげるとしたら彼しかいないでしょう。
そうです、井岡くんです。
言葉ずかいもテキトーで、玲子にバカと言われてもアタックし続ける。めげずに攻め続ける彼の姿に勇気をもらった人もいるのではないでしょうか。
なお井岡が玲子(聞いていない)に告白するシーンは、あんな凄惨な事件の小説ということを忘れるぐらいコメディでした。
「玲子ちゃん、抱いてェーッ」
「やかましいッ」
引用:誉田哲也著「ストロベリーナイト」
なにより良いところは彼が「イケメン」でない、というところです。
玲子にも井岡のことを「出目の出っ歯、さらに猿耳の強烈な顔」という言葉で表しています。
井岡がもし「イケメン」だったら話は大きく変わってきます。『チャラチャラしやがって…』とイライラしだす読者も出てくるでしょう。
俺なら確実にキレてます。
しかし同僚を殴りかかる玲子を冷静に止めたり、玲子に『主任は自分が守る』と伝えたり…彼の内面はイケメンなんですよね。
それもまたいい。なんだかんだ言って、こういうタイプの男性ってモテますよね。
とりあえず井岡くん、好きでした。
で、嫌いなのはガンテツこと勝俣健作。
彼に対して、読者的には賛否両論だと思います。
結果的に玲子の命を救ったことや、ラストの病室のシーンで玲子にかけた言葉などで「ガンテツはいいキャラだった」と言う方もいると思います。
しかしそれ以外がひど過ぎました。
玲子に対して過去のレイプを思い出させるようなセリフは後でどんなに良いこと言ってもチャラにはなりません。
通勤中の電車の中でこのシーンを読みましたが、あの時間のあの車両の中で一番キレていたのは私だったという自信があります。
そんな理由で私は彼が嫌いです。ただガンテツの過去も知りたい…嫌いでも気になってしまうキャラクターでした。
事件について
自分が今までに読んだ小説の中でも上位に来るであろうグロさ、エグさだったと思います。
本を読み始めたと思いきや、いきなり絶望過ぎる描写。文字に起こすのも躊躇い、読んでいても顔をしかめるほど嫌な描写です。
また、この小説のメインである「ストロベリーナイト」の描写。
個人的に女性を殺したシーンが特に印象が強く、本を読んで数年経っても覚えています。
嫌な描写ほど記憶に残ってしまうという人間の脳の仕組みはどうにかしてほしいものです。
また胸糞の悪さもグロさ同様なかなか強く感じました。
この事件に至るまでの出来事も胸糞悪いですし、犯人であった北見も胸糞悪かったです。
もちろん玲子が過去にされたレイプ事件も最高に胸糞悪いです。
詰め込み過ぎじゃないですかね?もう心がもたねえよ。
今回の事件で多くの人間が殺害されましたが、これに関しては自業自得ともとれます。
何を言おうとあんなショーを望んで見に行くやつは、ガンテツの言う通り精神が崩壊しているのでしょう。
被害者が何も知らない無実の一般人じゃなかったのがせめてもの救いです。
ただこの「グロさ」や「胸糞悪さ」が、逆に姫川班のやり取りの微笑ましさやキャラの魅力を引き立てていたように思います。
そのバランスがこの小説の一番のおもしろさだと私は思っています。
姫川玲子シリーズ 読書感想文はこちら
どんでん返しミステリーならコレ
